改訂版「日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識」からわかる日本語教育事情【2019年版】

日本語教師
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日本語教育能力検定試験の合格するための参考書はたくさんありますが、私が2008年に日本語教育能力検定試験を受験した時には「日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識50」という本に大変お世話になりました。

当時使用していた2006年9月第二刷発行版↓↓

その本が13年ぶりに改訂されました。

改訂版はKindle(電子版)にも対応しています↓↓

この改訂には日本語教育界の十数年の変化も反映されていると考えられるので、今回は「改訂版で何が変わったか」を分析してみたいと思います。

今回は「3章・社会」についてまとめました!

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  1. はじめに
    1. 初版・第二刷は縦書き、改訂版は「横書き」
    2. 改訂版からは「基礎知識『50』」の数字が消えているが…
  2. 「日本語教育能力検定試験に合格するための」3章の改訂箇所
    1. 昭和前期までの日本語教育(42項)
    2. 戦後復興から現代まで(43項)
      1. 在留資格「特定技能」について
      2. 留学生30万人計画について
    3. 態勢はどのように整備されてきたか(44項)
      1. 日本語教師の資格について
      2. AOTS(海外産業人材育成協会)について
      3. JICAの派遣体制変更について
    4. 日本語力をどのように測るか(45項)
      1. 日本語能力試験(JLPT)の形式・内容の変更
      2. BJTビジネス日本語能力テスト
    5. 学習者の多様化(46項)
      1. 児童に対する「取り出し授業」
      2. 自由貿易協定(FTA)の記述が経済連携協定(EPA)に変更
      3. 「特定技能」の在留資格
      4. 欧米諸国の移民問題
    6. 子どもたちの教育(47項)
      1. 日本語指導が必要な児童生徒の数について
    7. 日本語を学んでいるのは誰か(48項)
      1. 代表的なアニメに「ちびまる子ちゃん」「ONE PIECE」「NARUTO」が加わる
      2. 就学ビザと留学ビザの統一
      3. 日本語教師の数とボランティアの割合
      4. インドネシアの中等教育カリキュラム変更
    8. 少子高齢化と外国人労働者(49項)
    9. 共生社会に向けて(50項)
      1. 国籍・出身地別の割合の変化
      2. 東京都の各自治体の取り組みについての追記
      3. 外国人集住都市会議の活動を具合的に追記
      4. 留学生受け入れ10万人計画達成(2003年)から今日まで
  3. おわりに

はじめに

初版・第二刷は縦書き、改訂版は「横書き」

大きく変わったのは「改訂版は横書きになった」ということです。同じシリーズ本も横書きで出版されています。

最近では実用書も横書きのものが増えているので、今回の「横書き」への改訂は時代の流れなのかもしれません。

改訂版からは「基礎知識『50』」の数字が消えているが…

改訂版は第二刷の本のタイトルにあった「50」の文字がなくなっています。しかしながら、項目としては「50」のままで、項目数に変化はありません。また、構成も1章が「言語」について、2章が「教育」について、3章が「社会」についてとなっており、改訂前と同じです。

どこが改訂されたのか、細かく見ていきましょう!

 

 

「日本語教育能力検定試験に合格するための」3章の改訂箇所

「3章 社会」は改訂前も改定後も42項から50項までの9つの項で形成されており、一見すると特に変化がないように見えます。しかし、ここ十数年(2006年から2019年)で日本語教育をとりまく環境は大きく変わりました。その一つ一つを改訂内容をもとに紐解いていきます。

昭和前期までの日本語教育(42項)

明治から第二次世界大戦中までの日本語教育史について記述している項目です。この項では特に目立った改訂事項はありませんでした。

戦後復興から現代まで(43項)

在留資格「特定技能」について

改訂版には、安倍晋三内閣が2018年6月に新たな在留資格「特定技能」を設け、2019年4月から制度をスタートさせたことが追記されています。

新たな在留資格「特定技能」とは

  • 2019年4月から制度スタート
  • 特定1号は下記14分野で更新制、通算で最長5年まで在留可
  • 特定2号(建設、造船・舶用工業のみ)も更新制、在留上限なし
  • 下記14の特定産業分野で就労が可能

特定産業分野(14分野)

①介護 ②ビルクリーニング ③素形材産業 ④産業機械製造業 ⑤電気・電子情報関連産業 ⑥建設 ⑦造船・舶用工業
⑧自動車整備 ⑨航空 ⑩宿泊 ⑪農業 ⑫漁業 ⑬飲食料品製造業 ⑭外食業

https://www.jitco.or.jp/ja/skill/   国際研修協力機構(JITCO) ホームページより

特定技能に特化した求人サイト「特定技能ナビ」などもあり、国内の各業界で労働力が求められている現状が窺えます。

留学生30万人計画について

また、2008年に福田康夫内閣が「留学生30万人計画」を策定したことも追記されています。

留学生30万人計画とは

  • 2003年に「留学生受け入れ10万人計画」を達成
  • 2008年に福田康夫内閣が「留学生30万人計画」を策定
  • 日本を世界に開かれた国にする
  • 日本国内の日本語学習者数は2016年に20万人を突破

文部科学省の報道発表(平成31年1月8日)※PDFファイルによると、2018年5月時点で外国人留学生の在籍数は 298,980 人 となっており、2019年現在では「30万人」を突破しているものと見られます。

態勢はどのように整備されてきたか(44項)

日本語教師の資格について

日本語教師の資格については、法務省告示の日本語学校で教えるための条件であることが追記されています。つまり、教える場所を日本語学校に限らなければ資格は不要ということです。

法務省告示の日本語学校で日本語教師として勤務するための条件(2017年8月1日より以下の基準が適用されます)

  • 日本語教育科目の所定の単位数を修得して四年制大学または大学院を卒業
  • 日本語教育能力検定試験に合格(学歴不問)
  • 四年制大学卒業で420時間の日本語教師養成講座を修了

420時間の養成講座を修了していて四大卒ではない人は、日本語学校での新規雇用はできないことになっています。継続雇用については各教育機関によって措置が異なるようです。

 

AOTS(海外産業人材育成協会)について

また、AOTSが他団体との合併により、日本語名称が「海外技術者研修協会」から「海外産業人材育成協会」に変更になっていることが追記されています。

AOTSには日本語教育事業があり、AOTSにほんごe-learningといった独自開発のシステムを採用しています。

JICAの派遣体制変更について

2019年4月から派遣体制の変更により、全体名称がJICA海外協力隊になっていることが記述されています。

日本語力をどのように測るか(45項)

日本語能力試験(JLPT)の形式・内容の変更

2010年から日本語能力試験は形式が大きく変更されました。

  • レベルが1~4級の4段階から、N1~N5の5段階に
  • 「等化」により「尺度得点」を出す
  • 認定の目安として「Can-do自己評価リスト」を発表

新試験(2010年以降)の概要(PDF)はこちら

旧試験の2級と3級の間に相当するレベルがN3レベルです。

BJTビジネス日本語能力テスト

従来はマークシート方式でしたが、現在は画面上の試験問題にマウスやキーボードを使って答えるCBT(Computer Based Testing)方式に変更されていると記述されています。

改訂版ではBJTが「ビジネス場面に特化した試験」であることが追記されており、知識だけでなくビジネス上の対応力を測るテストであることが強調されています。

外国人の雇用増加に伴い、BJTビジネス日本語能力テストは今後さらに注目されそうです。

 

学習者の多様化(46項)

児童に対する「取り出し授業」

取り出し授業とは、授業時間に日本語指導が必要な児童をクラスから取り出して、教室外で指導することです。2014年4月の「学校教育法施行規則の一部を改訂する省令等」により、義務教育の中で年間280単位時間まで日本語教育に振り替えることができるようになったと記述されています。

自由貿易協定(FTA)の記述が経済連携協定(EPA)に変更

改訂前は、海外からの介護士や看護師の受け入れについて「フィリピンと自由貿易協定(FTA)を締結したこと」が触れられていたのですが、改訂版では「フィリピン・インドネシア・ベトナムとの経済連携協定(EPA)」という記述に置き換わっています。

自由貿易協定(FTA)… 特定の国や地域の間で,物品の関税やサービス貿易の障壁等を削減・撤廃することを目的とする協定
経済連携協定(EPA)… 貿易の自由化に加え,投資,人の移動,知的財産の保護や競争政策におけるルール作り,様々な分野での協力の要素等を含む,幅広い経済関係の強化を目的とする協定

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/fta/  外務省ホームページより

「特定技能」の在留資格

前述の記載した「特定技能」についての追記があります(同じ内容なので割愛します)。

欧米諸国の移民問題

2011年のシリア内戦による難民が、2015年に欧州へ押し寄せたことが触れられています。難民らがEU内を移動し、英国へ年間20~30万人単位で押し寄せるようになったことが、英国のEU離脱の原因と記述されています。

移民問題は決して他国の問題ではなく、今後は日本においても頻繁に議論されるでしょう。

 

子どもたちの教育(47項)

日本語指導が必要な児童生徒の数について

2004年9月現在で約2万人⇒2016年度の調査で4万人超に改訂されています。単純計算で2倍になっています。

日本語を学んでいるのは誰か(48項)

代表的なアニメに「ちびまる子ちゃん」「ONE PIECE」「NARUTO」が加わる

外国人留学生(男性)からは「ONE PIECE」や「NARUTO」の人気が高いです。国籍を問わず、様々な国の若者が日本のアニメを見ています。アニメが日本語を学ぶきっかけになっている人も少なくありません。

就学ビザと留学ビザの統一

2010年7月までは、日本語学校に在籍する学生は「就学生」と呼ばれ、「留学ビザ」とは異なる「就学ビザ」というものが発行されていました。現在は「留学ビザ」に統一されています。

日本語教師の数とボランティアの割合

2004年時点では約2万8,500人だった国内の日本語教師は、2017年度の文化庁の調査によると4万人弱に増加しています。ボランティアの割合は、2004年時点では全体の半数の1万4,500人でしたが、2017年度時点では全体の約6割にのぼると記述されています。

2004年年度から2017年度までの13年間の変化は以下のとおりです。

  • ボランティア日本語教師の数 約1万4,500人→約2万4,000人(約1万人増)
  • 有償で働く日本語教師の数  約1万4,000人→約1万6,000人(約2,000人増)

インドネシアの中等教育カリキュラム変更

2006年よりインドネシアの中等教育では第二外国語が選択必修になりました。その影響で、日本語学習者が急増しました。日本語は英語以外の第二外国語の中で最も人気があると述べられています。

各国の日本語学習者数の現状については、国際交流基金の「日本語教育機関調査」で見ることができます。 ※2019年7月31日時点での最新版は2015年度分となっています。2018年度分は2019年度中の公開になる予定です。

 

少子高齢化と外国人労働者(49項)

改訂版のこの項の目次では、改訂前の「研修生」のかわりに「技能実習」が追加され、「特定ビザ」と「留学生」が加えられています。改訂前と改定後のデータの変更点は以下の通りです。

※以下の改訂事項は、厚生労働省の「外国人雇用状況」のページで確認することができます。

単純労働者について

  • 改訂前:約76万人(2002年)⇒ 改訂後:約146万人(2017年)

在日ブラジル人について

  • 改訂前:28万7,000人(2004年末)⇒改訂後:2007年には31万人超、2008年のリーマン・ショック以降、20万人弱になる

技能実習生について

  • 改訂前:中国人が全体の7割程度 ⇒ 改訂後:32万8,000人で約半分がベトナム人、4分の1が中国人

また、「特定技能ビザ」と「留学生」の項目が加えられ、2019年4月1日から施行された「出入国管理及び難民認定法(入管法)※PDF注意」についても記述が加えられています。

 

共生社会に向けて(50項)

国籍・出身地別の割合の変化

2004年時点…韓国・朝鮮が1位、中国が2位、以下ブラジル、フィリピン、ペルー、米国と続く。

2018年時点…中国が1位、韓国が2位、以下ベトナム、フィリピン、ブラジル、ネパール台湾、米国と続く。(太字は改訂版で追加されている国や地域

東京都の各自治体の取り組みについての追記

東京都の各自治体は1995年の時点で、外国人の暮らしをサポートするあらゆる事業を行っているとの記述があります。現在もきめ細やかな情報サービスの提供には課題があると述べられています。

外国人集住都市会議の活動を具合的に追記

外国人集住都市会議の実績として、公立学校での外国人児童の教育について国へ要望書を提出したことと、日系4世の受け入れについて意見交換したことなどが追記されています。

外国人集住都市会議の会員都市は以下の通りです。

【群馬県】 太田市 | 大泉町 
【長野県】 上田市 | 飯田市
【静岡県】 浜松市
【愛知県】 豊橋市 | 豊田市 | 小牧市
【三重県】 津市 | 四日市市 | 鈴鹿市 | 亀山市
【岡山県】 総社市

https://www.shujutoshi.jp/member/index.htm  外国人集住都市会議ホームページより

留学生受け入れ10万人計画達成(2003年)から今日まで

2008年に策定された「留学生30万人計画」が達成される見込みであることや、2017年に在留資格をとり化された385人中「留学」の資格者は44.7%だったこと、2019年の留学生失踪事件などが記述されています。今後はより一層、留学生の質の向上が求められることになるでしょう。

 

おわりに

世界各国で移民政策に物議が醸されている一方で、2019年の日本では前述の通り「特定技能」のビザが解禁、そして待望の「日本語教育推進法」が施行されました。日本はより開かれた国になるべく、着実に歩みを進めています。

今回紹介した「日本語教育能力検定試験に合格するための基礎知識」は、日本語教師になるにあたって知っておきたい最低限の知識が1冊にまとめられています。この本は他の検定対策総合テキストに比べて小さく(A5サイズ)、軽い(約310g)ので、携帯にも便利です。

スキマ時間にこの本を活用して、日本語教育の扉を開いてみてはいかがでしょうか。

みやざき

日本語教師6年目。通信制大学を経て2008年に日本語教育能力検定試験合格。国内の日本語学校で専任講師、非常勤講師を経験。OPIテスター。

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