ご訪問ありがとうございます。日本語教師のみやざきです。
新型コロナウイルス感染拡大防止の影響で、各大学ではオンライン授業が続いています。
後期の授業もオンラインになったという大学も少なくないようです。

大学のオンライン授業って、どんなふうに進めているんですか?
今回は、留学生の日本語教育とキャリア教育に携わっている「あやみさん」にZoomでインタビュー取材をさせていただきました。

あやみさん、大学のオンライン授業の流れを教えてください!

はい!よろしくお願いします!

大学のオンライン授業で活用しているWebツール
あやみさんの担当クラスは中国出身の留学生がほとんど、とのこと。
日本の自宅からオンライン授業を受けている学生と、中国からオンライン授業を受けている学生がいるそうです。

オンライン授業で、配慮していることはありますか?

中国ではGoogle系(スプレッドシート、ドキュメントなど)やFacebookが使用できないので、他のツールを使用しています。
あやみさんが使用している各種Webツールは、以下の通りです。
- LMS(学習管理システム)はmanabaを使用
- 連絡用のチャットアプリは中国のWeChat(微信)を使用
- 非同期(授業外)のやりとりはPadletに音声や画像をアップ
- オンライン授業(リアルタイム)ではZoomを使用

中国のネット環境は、場所によっては不安定です。
週や日によっても接続の状態が変わります(泣)
国や地域によっては、ネット環境が不安定なところも少なくないです。
オンライン授業を設計する上では、配慮すべき点と言えますね。

ここからは、あやみさんが実際に使っているツールをご紹介します!
日本の多くの大学で採用されている「manaba」
manabaとは、日本の大学等の教育機関で多く使用されているクラウド型教育支援システムです。その主な機能は「LMS」と「ポートフォリオ」。
LMSで有名な「Google Classroom」の別サービスと考えると分かりやすいかもしれません。
あやみさんの大学では、この「manaba」を原則使用することになっているとのこと。
この「manaba」に、オンライン授業の事前課題(=反転授業)としてテーマに沿った動画や音声などをアップするそうです(詳細は後述します)
教員はLMS上で、各学生の課題への取り組み方(何回再生したか、どの問題を間違えたか等)を確認できる仕様になっています。
中国のメッセンジャーアプリ「WeChat(微信)」
WeChatとは、LINEのようにチャット形式で使える無料メッセージアプリです。
あやみさんは、Wechatの使い方を学生から教わり、中国のネット用語も伝授されたとか。
それは、「6666」=「すごい」
「6」の発音が中国語の「すごい」という意味の言葉に似ていることから生まれたスラングとのことです。日本でも「8888」=「拍手の音」のスラングがあるのと同じですね。
WeChatは、学生がZoomに入れないトラブル、課題のリマインドなどの連絡時に活用しているとのことです。
動画をシェアしてコメントがつけられる「Padlet」
あやみさんはLMSだけでなく、Padletというツールを併用しています。Padletは他校の教員に教えてもらったそうで、英語教育業界ではかなり有名なのだとか。
Padletはクラスによって、以下のような使い方をしているそうです。
【クラスA】学生自撮りのスピーチ動画をアップ→動画に他の学生がコメント
(=YouTube型の活用)
【クラスB】個人のページを作成→音読を自分と教員だけでシェア
(=ポートフォリオ的に活用)
無料版Padletは容量制限がありますが、簡単に操作できるのが魅力です。
多機能なビデオ会議システム「Zoom」
Zoomは新型コロナウイルスの影響によるテレワークへの移行において、最もシェアを伸ばしたツールの一つであると言えます。
Zoomには「ブレイクアウトルーム」という機能があります。
ブレイクアウトルームという機能を使うと、Zoom上で最大50個の「ルーム」が作成できます。参加者はそれぞれの「ルーム」でお互いに干渉せずにやり取りができます。別の部屋で作業するような感覚ですね。

あやみさんの「ブレイクアウトルーム活用術」は、後日改めて別記事でまとめさせていただきます!
オンライン授業前の反転授業(事前学習)のポイント
反転授業とは、事前課題として動画視聴をして予習することです。
英語では「flip teaching」や「flipped classroom」と言われています。
あやみさんの担当クラスの学生たちは
事前にLMS(manaba)で課題をこなして
オンライン授業に臨んでいるそうです。

反転授業を取り入れたことで、どのような効果がありましたか?

反転授業で、学生の課題提出・授業参加に効果がありました!
最も効果があったのが「語彙」と「聴解」の授業だった、とのことです。
実際の授業の流れを詳しく聞いてみました。
語彙の授業:ニュース動画の反転授業→当日はディスカッション

実際の授業の流れは、どんな感じですか?

反転授業ではLMSをフル活用しました!
学生は授業前に以下の1~6の反転授業を
LMS上で取り組んでおきます。
1 テーマを確認(文章で紹介)
2 アップされたニュース動画を視聴
3 2択問題で内容確認(数問のみ)
4 ディスカッションのテーマ紹介
5 意見フォームに4の意見を入力
6 最下部に語彙のリストをチェック
オンライン授業当日はディスカッション中心

語彙の反転授業で「語彙のリストが最後」というのが新鮮ですね!

この語彙リストは「語彙を分かっていない人」のためのリストなので、分かっている人は反転授業の前に時間を使わなくて済みます。
この授業は日本語力がさほど高くないクラスで実施した構成らしいのですが、あやみさんの心配をよそに「5 意見フォーム」には各学生の意見が溢れていたそうです。
中には「他の学生にこの動画をシェアしたい!」と動画リンクを添付してきた人もいて、実際のオンライン授業でその動画を紹介したこともあったとか。
このような反転授業があれば
多少日本語力が低い学生も
✅Google翻訳などを活用して課題に取り組むことができる
✅オンライン授業でのディスカッションでもチャットにコピペして意見表明できる
ことから、「授業に置いていかれる・参加できない」という問題が起きにくいですね。

Google翻訳を使っていたとしても、ディスカッションのための意見を組み立てるのは学生自身なので、反転授業を介して能動的に学んでいると言えます。
聴解の授業:事前課題音声→授業で答え合わせ&ディスカッション

聴解の授業では、いかがでしたか?

一番に感じたことは、「リアルタイム授業で一斉に音声を聴いて、一斉に答える必要って、あるのかなあ・・・」ということです(笑)
聴解の授業の流れは
1 LMS上にアップされた音声課題を聴く
2 1を聴いて、LMS上の問題を解く
オンライン授業では
答え合わせとディスカッションを行う
LMSによる反転授業管理のいいところは、
学生によって事前課題への取り組み時間が異なる(音声を何度も再生している人、再生が1回のみの人などが、教師側にはわかるようになっている)ので、各学生の学習傾向もつかめるところ、とのこと。
事前課題の結果はエクセル出力も可能。
教師側も授業の前に「どの問題を間違えているか」がわかるので、みんなが分かる問題を何度も説明することを防げます。

反転授業を取り入れたら、授業効率がよくなりました!
反転授業のポイントまとめ

反転授業の内容を構成する際のポイントを教えてください。

反転授業のポイントは「その課題をこなさないとリアルタイムのオンライン授業に参加・発言できないもの」を準備することです。
反転授業のメリットは・・・
- クラス内で多少日本語力が低い学生も、無理なく取り組める授業設計ができる
- 授業前に各学生が「何ができて、何ができない、どこで間違えるのか」を把握できる
- リアルタイムのオンライン授業が効率的かつ丁寧に、そしてアクティブにできる
✅プリント事前課題、やりません
✅youtubeを見てねという指示、見ません
反転授業の課題内容はもちろん、
何を使って、どのように取り組んでもらうかという形式も重要です。

LMS上に動画や音声を貼り付け、確認問題やディスカッション用の意見メモも全てLMS上で提出してもらう。それが効果的でした!
まとめ:オンライン授業は「反転授業」で効果を最大化できる
今回は、大学専任講師のあやみさんに
大学でのオンライン授業前の「反転授業」の効果とポイント
について教えていただきました。
反転授業による事前学習は
オンラインでの学習効果を最大化する
というメリットがあります。
次回以降も、あやみさんに伺った
オンライン授業における
をなどを記事化してお届けします。
どうぞお楽しみに!