ご訪問ありがとうございます。日本語教師のみやざきです。
前回は、大学のオンライン授業でのZoomブレイクアウトルーム活用術についてレポートしました。
今回も引き続き、国内の大学で留学生の日本語教育とキャリア教育に携わっている「あやみさん」へのインタビューをまとめました。

あやみさん、第3弾もよろしくお願いします!

よろしくお願いします!今回は「オンライン授業での学生への配慮と今後の課題」をご紹介します。
過去のインタビュー記事はこちらです↓↓
インタビュー第1弾:「オンライン授業前の『反転授業』の効果とポイント」
インタビュー第2弾:「オンライン授業でのZoomブレイクアウトルーム活用術」
授業についていけない学生には配慮が必要

オンライン授業を受けた学生の感想はどうでしたか?

一部の学生からは、オンライン授業への否定的な声もありました。
オンライン授業に否定的な声もあることも事実
(オンライン授業に否定的な学生の声)
・課題のみ、非同期(リアルタイムではないこと)授業は難しかった
・一度も大学に行ったことがないので、大学生になった自覚がない

一方で、「今期のオンライン授業は理想の大学生活と同じ」という声もありました。オンラインだけど、クラス授業も楽しいし、友達もできた、という声です。

同期(リアルタイム)のオンライン授業では、教師側が「学生が交流する機会」を意図的に設けることが、学生への配慮にも繋がりそうですね。
クラスの中には自律学習が難しい学生もいる
そして、自律学習が難しい学生もいることも事実です。オンラインではちょっとしたピア活動(学習者同士のやりとり)が起きづらいことも原因かもしれません。

そして、オンラインだと「学生が声を上げにくい」のかもしれません。机間巡視していたら、個別に気軽に聞いたりすることもできるのですが・・・。
対面での一斉授業の場合・・・
・教師を呼び止めて、すぐ聞くことができる
オンラインでの一斉休業の場合・・・
・Zoomの個別ブレイクアウトルームでフォロー (その時に饒舌になる学習者もいる)

Zoomのブレイクアウトルーム活用術については、前回の記事をご確認ください。
事前課題は「できそう・やりたい」と思わせる工夫が必要
また、事前課題(反転授業)もおもしろいものでなければなりません。
そして授業についていくのが難しい学生にとっても、無理なく取り組めるような配慮が必要です。

つまらない課題・難しすぎる課題では、学生の取り組みも悪くなります。課題は学生が「できそう!やりたい!」と思えるようにすることが大切です。
オンライン授業でのシャドーイングはミュートで
また、オンライン授業でシャドーイングを行う際、あやみさんは学生全員をミュートにするそうです。
そうすれば、人目(人耳?)を気にせず発音練習が出来るから。自分の声が他の人に聞こえなければ、学生たちは自分のシャドーイングに集中できます。

オンラインでも学生への配慮が必要ですね。

はい。同時に「教師の権威性を考え直す」ことも重要だと思っています。
教師は授業で「私が教えなくては」と思いがちですが、「教師が正解を持っている」と思われることに葛藤があるというあやみさん。「教員=教える人」「学習者=習う人」という固定的な役割を、オンライン授業を契機に疑ってみる必要があるのかもしれません。
次の項目では、「オンライン授業の今後の課題点」についてまとめました。
オンライン授業で気づいたことと今後の課題

オンライン授業での気づきや今後の課題について教えてください。

オンライン授業でよかったこともあれば、改善が必要なこともありました!
LMS(学習管理システム)で課題の提出率アップした
第1弾の記事で紹介したLMSの活用でも触れましたが、LMSで課題を提示すれば、きちんと課題をこなす率が高まるそうです。
LMSを活用した事前課題は、対面授業で直接声かけして紙の課題の手渡しした時よりも、ずっと課題の取り組み方がいいんだとか。

もしかしたら、LMS上の課題は筆記用具や机が不要で「リラックスして課題に取り組めるから」なのかもしれません。

学生の中には部屋に机がないという人もいますね。スマホでサクっと課題がこなせると、課題提出のハードルが下がりそうですね。
従来の自宅学習に囚われないやり方で、課題への取り組みが改善したと言えそうです。
オンラインでの「クラスの雰囲気」はクラスによって差がある
オンライン授業だと、クラスの雰囲気馴染むまで時間がかかるのでは?と思いがちですが、結論から言うと「それはクラスによって異なる」とことでした。
オンラインでもすぐに和気あいあいした雰囲気になるクラスもある一方で、会ったことがない人にカメラで顔出ししたくないという学生がいるクラスもあるようです。

とある学生が率先して「オンライン飲み会」を提案し、翌週驚くほど打ち解けていた、というクラスもありました!

そういう学生がいると助かりますね!日本語能力とはまた別の、人とかかわろうとするコミュケーション能力がクラス全体の雰囲気を変えるのかもしれませんね。
カメラのオン・オフが雰囲気づくりに起因しているというのは早計ですが、クラスの中で1人でも「みんなともっと仲良くなりたい!」と行動する人がいると、クラスの雰囲気が良くなるようです。
この雰囲気づくりこそが、これからの教師の役割なのかもしれません。
オンラインでの「会話の順番」は思いのほか難しい
オンライン授業では「誰が次に話すか」といったタイミングを計るのが対面授業よりも難しいとのこと。たしかに、クラス内の雰囲気を遠隔でキャッチするのは大変です。
学生だけでなく教師側も、話すタイミングを掴むのが難しい場合があります。

7~15人クラスの場合、会話のターンをとるのが難しいことがありました。

対面では「何か話したい様子」がわかりますが、オンラインでは難しそうですね。
クラスによって雰囲気や流れが違うため、ある程度の慣れは必要かもしれません。オンライン授業を活性化させるためには、会話のターンの回し方は今後の課題と言えそうです。
授業内に「なんでも相談OK」の時間を設けてみたら・・・
対面授業では休み時間に学生が教師に相談するチャンスがありますが、オンラインでは授業が終わるとすぐにネット回線を切断、ということもあるかもしれません。
あやみさんは授業内に「20分程度のオフィスアワー」を設けたそうです。

その時間は、レポートの書き方についての質問を受けたりしていました。

オフィスアワーがあれば、学生が気軽に質問できそうですね!
特に大学1年生の場合、そもそも授業の流れや課題の提出など不安だらけです。学生によっては、他の授業のレポート課題(日本語についての質問)などもあったそうです。
授業内に「オフィスアワー」があれば、学生の不安も和らぎそうです。
オンライン授業だとチャットやタイピング上達する
オンライン授業では、授業中でに事前課題でも「日本語入力」を行う機会が増えます。
授業でチャットがうまく活用できるようになれば、授業外での日本語メッセージのやりとりも向上しそうです。
オンライン授業では音声だけではなく「音声+文字」でやりとりできるので、レベルに差がある学生も授業に参加しやすくなります。日本語の言い回しが分からない時には、翻訳アプリ等を使いながら話し合いを進めることもできます。

従来の対面授業よりも、授業参加のハードルが下がっているように思います。

音声も文字も使えるのはいいですね。チャットはたしかに発言しやすそうです!
ツールを活用することで、学生の授業へのハードルを下げることができそうですね。
まとめ オンライン授業を契機に教師の役割を見直す
今回はオンライン授業での「学生への配慮」と「気づき・今後の課題」をまとめました。
オンライン授業における振り返りは「教える・教えられるの関係を見直すきっかけ」にもなりそうです。
あやみさんへのインタビュー記事は今回で最後です。本当にありがとうございました!
機会があればインタビュー記事を承ります。ご希望の方はみやざき(@jinro_miyazaki)までご連絡くださいませ。
今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。