日本語教師にZoomdeインタビュー Vol.4:オンライン授業における日本語教師×学生のラポール形成のコツとは?

オンライン授業

ご訪問ありがとうございます。日本語教師のみやざき(@jinro_miyazaki)です。

前回までの【日本語教師にインタビュー】シリーズに続き、今回はカナダの大学で日本語教師として勤務するHinakoさん(@hinako_canada)に、Zoomでインタビューさせていただきました。

 

みやざき
みやざき

Hinakoさん、よろしくお願いします!

こちらこそ、よろしくお願いします!

 

Hinakoさんの大学での勤務歴およびオンライン授業の現状↓↓

2010年からカナダの大学で日本語講師→2020年3月完全オンライン移行。8月まで100回ぐらいZoomクラス。年内も完全オンライン授業。Hinakoさんのnoteより)

 

今回は大学のオンライン授業におけるラポール形成についてお話いただきました。

※心理学用語での「ラポール」は「橋」という意味です。教師と学生をつなぐ「橋」をイメージしてください。お互いにコミュニケーションが取れて信頼関係ができている状態を「ラポールが形成されている」 と言います。

今回はHinakoさんに「教師と学生のラポール形成」のために教師ができる仕組みづくりについて、お話を伺いました。

  

みやざき
みやざき

今回はHinakoさんに以下のマインドマップをシェアしていただきながら、インタビューをすすめました。

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Hinakoさん
Hinakoさん

字が細かくてすみません……。さっそく、ラポール形成について順番にお話しさせていただきます!

 

教師と学生のラポール形成は「個人面談」「個別Slack」で

 

みやざき
みやざき

オンライン授業を通して学生とラポールを形成するために、Hinakoさんはどのような取り組みをされましたか?

Hinakoさん
Hinakoさん

オンライン授業を受けた学生たちは ①メールで教師に質問するのは敷居が高すぎる ②オンライン授業は課題が多すぎる と感じていたようです。そこで私は「個人面談」と「個別Slack」でラポール形成を試みました。

 

オンラインで個人面談の時間を授業内に設ける

Hinakoさんは当初、授業時間外に希望者のみ個人面談を行っていたそうです。しかしながら、希望制だと「本当に話したい学生」は面談に来ないという現象が生まれます。

Hinakoさん
Hinakoさん

そこで、授業中に個人面談を組み込んでみました。

 

Hinakoさんの担当するクラスは、オンライン授業で学生が20人前後出席しているとのことです。その授業中に、1人5分程度のオンライン面談を行ったそうです。

クラスの中には中国にいる学生や、自宅のオンライン環境がよくない学生がいるため、面談中の授業課題は同期・非同期から選べる「選択式」にしたそうです。

 

同期→みんなで同じ時間にアクセスして、リアルタイムで一緒に学習すること
非同期→それぞれが都合のよい時間に、与えられた課題を行うこと

 

みやざき
みやざき

個別面談をしている間に、他の学生は課題を行うというのは画期的ですね!授業中であれば、学生一人一人を確実に個人面談につなげることができますね。

 

個別Slackでreflection form(ふりかえり帳)で自己評価

Hinakoさんは学生とのやりとりに、チャットツールの「Slack」を活用したそうです。

Slackでは学生ごとにチャンネル(部屋のようなもの)を作り、個別のreflection form(ふりかえり帳)として学生に書き込んでもらったそうです。

 

具体的には、Slackに「昨日何を勉強したか」「今日、授業で何を勉強したか(わからないところがあったか」「わからないところをどうするか(Plan)」「教員への質問・コメント」の4つを自分で振り返って入力するという方法です。

Hinakoさん
Hinakoさん

Slackでは相手の投稿内容に対して多種多様なスタンプで気軽に「既読+気持ちのニュアンス」を伝えられるので、とても便利です!

 

また、反転授業の課題もSlackで提出してもらったそうです。Slackを活用することで、メールよりも気軽にやりとりできるため、学生とのコミュニケーションが増えたとのこと。 

Hinakoさん
Hinakoさん

基本的には学生本人に振り返ってもらいますが、「教師にチェックしてほしい時」は @メンション(@の後ろにユーザー名を入力) をつけて投稿してもらいます。そうすれば私に通知がくるので、必要な通知だけをチェックすることができます。

 

様々なツールを使って学生の「授業前後」をフォロー

 

みやざき
みやざき

いろんなツールを使ってみて、学生の反応はいかがでしたか?

Hinakoさん
Hinakoさん

こちらが思っている以上に、学生たちはツールを次々に使いこなします。学生はツールの活用をあまり負担に感じていないようです。むしろ教員のほうが、慣れないツールにアタフタしてしまいます(笑)

 

「SLIDO」で学生が質問しやすい環境づくり

中でも匿名で質問ができ、人の質問に便乗できる「SLIDOは便利だったそうです。

Hinakoさんのnoteによると、「SLIDO」は質問を受け付けるURLを1週間公開することができるそうです。たとえば、授業の前後3日間と授業当日を「質問受付可能期間」にすれば、学生は授業の前後を問わず好きなタイミングで質問ができます。

さらに、人の質問に「LIKE(いいね)」をつけて便乗できます。質問は「LIKE」が多い順から表示されるので、教師はクラスでもっとも注目の集まっている質問から回答することができます。

 

みやざき
みやざき

授業中に質問できなかったり、後で質問を思いついたりする学生もいるので、SLIDOはいろんな学生に対応できそうですね!

Hinakoさん
Hinakoさん

はい!そして、課題の提出やフィードバックも工夫してみました。

 

さまざまなフィードバック法を試してみる

オンライン授業中は顔出しをしなかった学生も、非同期でのビデオ課題(教員のみが閲覧可)の顔出しには応じてくれたそうです。学生の中には「会ったことがない人に顔を見せるのは怖い」と感じる人もいるようで、Hinakoさんはその点に配慮されたそうです。

Hinakoさん
Hinakoさん

ビデオ課題の提出は「やってよかったこと」の一つです。授業中に顔が見えない学生を個別に把握することができるので、教師側が親近感を感じられます。

 

以前は学生のビデオ課題に対して、個別に動画でフィードバックにしていたそうなのですが、学生が96人いるため、マンパワー的な面で断念したそうです。

Hinakoさん
Hinakoさん

現在は、全体に向けて一括でフィードバックしています。

 

その他、FlipGrid(動画投稿でコメントしあうツール)、Vocaroo(高性能ボイスレコーディング サービス)を活用した音声フィードバックなど、様々なAudioフィードバックを行っているそうです。

SlackなどのSNS利用、課題への丁寧なフィードバック、FlipGridなどを使って顔を出してのオーディオフィードバック、Reflection Form(振り返り帳のようなもの)でのコメントのやり取り、とにかくいろんな方法で学生さんが先生とコンタクトをとれるようにするのがキーです。(Hinakoさんのnoteより)

 

みやざき
みやざき

学生からすると、自分に合ったツールを選んで教師とコンタクトをとれるのは嬉しいですね。これならオンライン上でもラポールが形成できそうです!

 

 

宿題提出や従来のテストのあり方を見直す

 

Hinakoさん
Hinakoさん

宿題や小テストも、成果物重視→プロセス重視に切り替えました。

Hinakoさんは反転授業を活用するだけでなく、宿題や小テストも刷新したそうです。

 

その1・使用教材『げんき』のワークブックは提出させない

Hinakoさん
Hinakoさん

教師側のチェックが大変なこともあり、ワークブックの取り組みは各個人にまかせました。ワークブックが必要だと思った人は、前述の「Slack」での振り返りで「ワークブックをやります」と宣言し、自分で頑張っているようです。

 

その2・ひらがな、カタカナ、漢字は学習ツールのリストから好きなものを選ぶ

Hinakoさん
Hinakoさん

同期授業で文字導入をするのではなく、ひらがな、カタカナ、漢字を学べるWebツールのリストを渡し、各自で選んで取り組んでもらうようにしました。

 

とはいえ完全に放置しているわけではなく、授業中にときどき「どこまで学んでいるか」を早押しクイズの「Kahoot! 」や、1人1人専用ホワイトボード「Whiteboard」等のツールを使って確認するそうです。

また、ひらがなの小テストは従来の「本番一発勝負」を以下のように変えたとのことです。

 

その3・「46問を3分で、ひらがな小テスト」(例:め→me とタイプ)

・「アンリミテッド・アクセス」で何度もチャレンジできる

・何度もやってもらうこと自体が意図(タイプの練習にもなる)

・テスト自体がラーニングプロセスになっている

 

みやざき
みやざき

通信制大学も同じような方式で小テストを行います。何度でも挑戦できるのですが、きちんと学習していないと簡単にはパスできません(笑)

今後のオンライン授業の小テストは、この方法が主流になるかもしれませんね。

  

まとめ オンラインならではの方法で学生との信頼関係構築を

今回はさまざまなツールを活用して、オンライン授業で「教師と学生のラポール形成」を模索するHinakoさんにインタビューしました。

 

みやざき
みやざき

オンライン授業だからといって諦めるのではなく、オンラインだからこそ様々なツールで学生をフォローしながら、学生との信頼関係をつくっていきたいですね。

Hinakoさん
Hinakoさん

はい。オンライン授業では教師のマインドセットが重要です。これまでの評価法や授業・宿題のあり方にとらわれず、柔軟に対応することが大切だと思います。

 

次回は引き続きHinakoさんに「学生同士のラポール形成」について伺います。

どうぞお楽しみに!

みやざき

通信制大学で日本語教育を学び、2008年に日本語教育能力検定試験合格。国内の日本語学校で専任、5年のブランク後に非常勤講師→フリーランス。現在は地域日本語教育コーディネーター、Webライティング、コラム執筆等を受託しています。

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