
ご訪問ありがとうございます。日本語教師のみやざきです。
「~として」はN1~N3で導入される文型ですが、いろんな用法がありますよね。
英語圏の学習者には「英語の “as” と同じ使い方です」と説明することもあるかもしれませんが、
- 学習者が “as” の用法を知らない
- “as”といっても、意味合いがさまざま
- “as” では片づけられない用法がある
などの場合もあります。
その結果、学習者は例文で紹介されているような「留学生として日本に来ました」といった使い方しかできないまま終わります……。
そこで、「~として」を細かく分類すれば、学習者に「どのような場合に使えるのか」という具体例を示すことができるのではないかと考えました。
この記事執筆のきっかけになった
akky先生(@bluebamboo15 )のツイート↓

人によって様々な分類の仕方があると思いますが
私なりに「~として」を分類してみました!

英語の”as”と同じ用法
英語の”as”とほぼ同じ使い方と思われる例文を、既存の分類法+αでまとめました。
人の「立場」を表す
- 来年は先輩として、ぜひ頑張ってほしい
- 親戚の子どもを養子として迎えた
- 友人に彼女を恋人として紹介した
「人の立場」+として という使い方です。
留学生として/親として/責任者として/など、例文が作りやすい用法です。
物事の「一般的な評価」を表す
- 好きなアニメが日本を代表する作品として紹介された
- この町は湖が美しい町として知られる
- その女性は初めて洋服を着た人として有名になった
「評価」+としての用法です。
一般的に価値が認められた時などに使えます。
プラスの評価だけでなく、
「彼は校内では女たらしとして有名だ」
「その場所は不毛の地として知られる」
などの、マイナスの評価にも用いられます。
判断・意見を述べる、批判する
- 私としては今回の件を表沙汰にしたくない
- 身勝手な振る舞いは一国のリーダーとして不適切だ
- 自分は教師としてはまだまだだ
「人」+としての用法です。
一見、「立場」と同じ使い方ですが、「として」だけでなく
「としては」に置き換えることができます。
物事の経過を表す
- ここまでを下書きとして保存する
- その話をきっかけとして調査を進めた
- 今日はここまでとして、残りは明日やりましょう
「ある時点」+としての用法です。
新たな物事を始める場合のスタート地点・中間地点などを表現する用法です。
ここで、「下書き」って名目じゃないの?というツッコミがあるかもしれません。
「名目」は、次項でまとめました↓
名目(何のため/どんな目的)
- 商品開発の予算として5千万円が計上された
- 今回の議論のテーマとして環境問題を扱った
- 授業の教材として、新刊のテキストを購入した
名目(何のために、どういった目的で)という場合に用いられます。
「予算=5千円」「テーマ=環境問題」「教材=新刊のテキスト」であることが分かります。
※先ほどの「下書き」は「下書き≠保存」なので「名目」のカテゴリには入れませんでした。
同等の価値があるものを受け渡す
- 優勝賞品としてトロフィーが贈られた
- 慰謝料として200万円が支払われた
- バレンタインデーのお返しとしてクッキーを渡した
この用法は出来事の対価に、物や金銭などを授受する時に使います。
これも「優勝賞品=トロフィー」「慰謝料=200万円」「お返し=クッキー」なので、「名目」のカテゴリと同じとも言えます。
本来の用途以外の活用
- 風呂敷は鞄としても使える
- 古民家をカフェとして運営している
- マスカラを生え際の白髪隠しとして使った
「想定されていなかった使い方」+として という用法です。
何かの代わりに別の物を使用するときなどに用いられます。
報道における表現
- 容疑者は三人を殺害したとして身柄を拘束された
- 銀行員が10億円を横領したとして逮捕された
「犯行」+として の形でニュースなどで用いられます。
(容疑者が)〇〇したから(警察に)~された、といった意味合いで使われます。
英語の ”as” と異なる用法
つづいて、”as” とはニュアンスが異なる使い方についてまとめました。
ひとまず保留にする
- それはそれとして、まずはこの問題を片づけよう
- 会話はよしとして、読解が難しすぎる
「そのことは認める・問題ないけど」といった意味合いの使い方です。
前件については掘り下げず、後件をメインに話したい場合に用いられます。
例外がない(打消し表現)
- 誰一人としてその場所にはいなかった
- その掃除機は塵(ちり)一つとして見逃さない
- 彼は一日として仕事を休んだことはない
「全く~ない」といった意味合いを強調する場合に用いられます。
助数詞として「一(いち)」が用いられることが多いですが、「彼のような人は二人としていない」のように唯一無二であるといった意味合いでも用いられます。
態度や様子を表す
- 彼女は嬉々として話し始めた
- 父は頑として譲らない
「態度を表す言葉」+として の用法です。
「嬉々として=嬉しい様子で」「頑として=頑固な態度で」といった意味合いで使います。
「~として」の分類まとめ
今回は「~として」のさまざまな用法を例文とともに分類しました。それぞれの用法がN1~N3のどれに当たるかは、テキストによって異なるため明示しませんでした。
「~として」には他の視点からの分類方法もあると思います。今後もいろんな見方を参考に、随時内容を更新していきたいと考えています。
また次回の記事でお会いしましょう!
